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小説 夕焼け同盟5

小説 夕焼け同盟5節

無意識のうちに自宅の鍵を閉め

無意識のうちに信号が青に変わった横断歩道を歩く。

終わることのないメビウスの迷路を抜けることに思考のほとんどを傾けてながら。

どちらが無意味なのか。考えることか。糧を得るための仕事なのか。

大人という部類に入ってから何百回と繰り返されてきた不毛な思考。



もう、止めよう。

とお決まりの結論に達した頃には、お決まりの電車の乗車口で名前も仕事も知らないけどお決まりの面子と一緒に並び、電車を待つ。隣に並んでいる女の香水の匂いからして木曜日かと、日付の表示されない腕時計の針を見る。なかなか癖というものは直せない。「おまえは何かに追われているように、時計ばかり見るよな」と言った遊び友達の言葉を思い出した。

本当のところ、クロノグラフのいくつもの針が連動して一つの時間を紡ぎあげる様を見ると落ち着くし、機械式時計のずれていく危うさが気を紛らわすのにちょうどいいだけなのだが、説明するのが面倒くさくて、適当に相づちを打ってその場をしのいでいた。

プラットホームにアナウンスが流れ、少し潮風で所々錆びた電車が時刻表どおりに駅へと入ってきた。もう既に満杯になった車両のドアが開く。込み合った車内は車窓を曇らせていた。見るだけでもたれそうな圧縮陳列された車内でこれから過ごす30分を考えれば、朝食をカロリーメイトゼリーにしたことは完璧な選択だ。

小説 夕焼け同盟4

  by hosimango | 2005-03-15 02:31

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